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松茸に和牛!秋を食べ尽くす割烹旅館

和のオーベルジュに信州で会う
割烹旅館 桃山 を体験

長野県は松本の美ヶ原。関東にいると美ヶ原高原美術館のCMはよく目にする。蓼科、木曽路、松本市の真ん中に松本城。信濃路の真ん中の美ヶ原高原、入り口に温泉郷がある。

長野自動車道を松本ICで降りて、30分弱。「美ヶ原温泉」はいい具合にひなびた温泉郷で、建物が低くて安心するのだが、そこからさらに車を進めると高台へと上がる坂道がある。ギアを落とし、坂を上がると松本市が一望に広がる。気がつけば、森のような巨大な日本庭園の中である。木々の中を進むと瀟洒な日本家屋が現れる。

そこが割烹旅館 桃山である。松本出身の友人に、松本で良い宿はないの? と聞いて、即答だったのがこの桃山だ。食道楽の独身女が、

「すごく豪華だけど、落ち着く。料理はおいしいよ。行ったら、そば切りをね、ぜひ食べてくださいよ」

何だよ、そば切りって。そばがきとは違うのか。うまいらしいのだ。そういうわけで子どもと嫁と泊まりに行ったのだ。

元々は果樹園(名前の通り、桃も作っていたそうだ)だったのだが、それを日本庭園に変え、料亭に。現在はさらに旅館へと設えを変え、3600坪の日本庭園を前に料亭の味と温泉を愉しめる。

元が料亭だから割烹旅館。宿泊可能なレストランをオーベルジュというが、割烹旅館はさしずめ日本のオーベルジュである。

着くとお茶とお菓子でまず一服。お茶が熱くて飲めない2才の子どもにジュースを頼んだら、生ジュースが出てきた。絞りたてオレンジジュースのうまさに、勢い余って飲みこぼす子どもの襟首を拭きながら、(侮りがたし、割烹旅館)と思った。
割烹旅館 桃山
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割烹旅館 桃山

そば切りを食べたこと、ありますか?
料亭の味を旅館で味わう

じゃらんnetのスタンダートプランは1人1万8900円とお買い得だったので、料金を足して食事をグレードアップしてもらった。なので料理は1番良い部屋と同じだ。

スタンダートとはいえ部屋は十分なのであって、子どもが走る走る。広い! というだけで大喜びなのだ。こっちは床の間の花瓶をいつ倒すかと気が気じゃない。高い部屋には内風呂が付き、専用の庭園が付くが、家族持ちは花より団子である。

そして出てきた料理は先付けから始まり、前菜、椀、造り、台の物、煮物、焼き物、口替りに揚げ物、蒸し物、酢の物、ようやくご飯とお味噌汁、最後にデザート。和のフルコースとはこういうことだ。

先付けと前菜は凝りに凝った料亭スタイルである。ウナギとウリとタピオカを合わせてさっぱりしたり、カボチャを芋ようかん風に仕上げた寄せ南京が不思議に甘かったり、とろろにじゅん菜を入れ込んで、とろとろが二乗になったりだ。

中でもおいしかったのがわさび漬。中に枝豆が入っている。わさび漬で枝豆を漬けてあって、それで辛みは抑えられ、食べたらツーンではなく、食べたらじわっと、あ、辛い、みたいな。塩味はしっかり効いて、日本酒がすすむ、すすむ。

話に聞いたそば刺し(画面右上)は、氷を敷き詰めた木箱に入って出てきた。板のようにぶ厚いそばである。そばを細く切るのではなく、ガッツリと切り落とす。それを醤油で食べる。そば刺しの刺しは刺身の刺しなのだ。

しっかりした食感が楽しい。噛むとそばの香りがガンガン立ち上がって、うまい。初めて食べたが、オンリーワンの味だ。そば刺しはそば刺し以外では味わえない、いわゆる普通のそばとは大きく違った味覚の具合なのだ。
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初めて食べたイワナの刺身
山の精が凝縮された卓の上

造りはイワナである。山だなと思う。イワナが刺身で食べられることは知っていたが、食べたことはなかった。そもそも今まで食べた焼きイワナも2尾か3尾ぐらいのものだ。あまりに貧弱なイワナ体験。

白い身に歯ごたえを期待したのだが、噛むとくちゅりとやわらかい。味は生魚だが、歯ごたえはタラのバター焼きみたいで妙な感じだ。

刺身の後はステーキだ。カンカンに焼けた石の上で、小ぶりのステーキがシューシューと音を立てている。上にはたっぷりの大根おろしとアクセントのなめこ。もちろん和牛である。締まっている肉だが、さすがに和牛、中からは脂がしたたる。大根おろしでさっぱり食べる。

そして次はというと、七輪が運ばれてきた。大皿にどっさりと盛られたのはキノコである。この大きなものは松茸? さらに口替わりとして運ばれてきたのは、松茸の寿司だ。

こんなにたくさんの松茸を食べたことがない。カナダ産や韓国産ならともかく、国産の身の締まった松茸である。目の前に二つ割りで無造作に置かれた松茸、これですでに生涯の松茸量をオーバーしている。

よく焼いた網に松茸を載せると、バーッと部屋中に松茸の匂いが立ち込めた。
割烹旅館 桃山