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上澄みが絶品? 紹興酒を甕(かめ)で買う

南條先生の小品にならい、
甕(かめ)で買った紹興酒

紹興酒の甕が届いた。ダンボールを開けると中華料理屋の軒先に並ぶ、例の白い甕だ。ウホッと声が出た。

南條竹則という作家をご存知だろうか。酒飲みが酒を飲みまくって酒の仙人になる「酒仙」という、落語みたいな小説でデビュー。新人賞の賞金を懐に本場中国で満漢全席の宴席を設け、そのドタバタな顛末を書いた「満漢全席」にて、グルメ小説家と呼ばれるようになる。

南條マジックと呼んでいるのだけれども、この方のお話は読むと堪らない。中華が食いたくて食いたくて、本を持ったまま、新宿の東順永に直行、あひるの唐揚げと水餃子、干し豆腐の細切りで老酒と白酒を延々と飲んだ。

「満漢全席」は本編と他に短編が数本、収められている。うちの1本、「老酒の瓶」を読んで以来だ、いつか甕で紹興酒を買いたいと思っていたのだ。。〈酒飲みの家系に生まれた。〉で始まる「老酒の瓶」は主人公が初めて甕で紹興酒を買う話。都合の悪かったはずの友人が吸い寄せられるように現れ、ともに酒を飲むという異界譚。生霊が絡んで、内田百間の味わいがある一編。

その一節。友人は〈ねっとりしたあめ色の酒が長瀞の岩場をつたいこぼれるみたいな景色〉が見えて、不思議にも主人公の部屋へ足を運ぶ。読んでいて、そんなビジョンを見たら、行くしかないだろうと思った。紹興酒のあの色を称してあめ色と、これで覚えた。
南條竹則著「満漢全席」と甕入り紹興酒
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甕の蓋を開ける

分厚い石膏はのこぎりで
甕の蓋を開ける

よく見かける紹興酒の甕は9リットル。ちょっと大きすぎる。インターネットを探していたら、「紹興酒専門店アランチャ」で5リットルの甕が売られていた。

紹興酒といえば中国の浙江省紹興市、そこで一番有名な酒家がかの魯迅が通っていたという咸亨酒店。咸亨酒店に酒を卸している日盛酒業有限公司の甕だそうだ。

甘口と老酒熟成があり、3年、8年、12年、20年がある。悩ましいが、松竹梅なら竹を選ぶ日本人なので、8年にする。通常、瓶詰めで700円前後の紹興酒は3〜5年だ。ちょっとだけ年上になる。甘口はよくわからないので、今回はベーシックに老酒熟成。紹興老酒熟成8年、8,925円なり。

紐がついていたので引っ張りだすと、結構な大きさだ。口は白く石膏で固められている。どうするのかとアランチャのサイトを見ると、ノコギリで切れ目を入れ、ノミで押し割るという。

石膏が飛ぶというので新聞紙を敷き、ノコギリでてっぺんに切れ目を入れた。酒を飲むのに大工道具が必要だとは思わなかった。
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蓋の下にはかぐわしい
芳醇なあめ色の美酒

切れ目が入ったので、トンカチでノミを押し込んでいく。バリバリと石膏が剥がれる。中から葉っぱのようなものが出てきた。竹の皮らしい。封がしてある。

紹興酒は紹興で作るから紹興酒、他で作るものは老酒と呼ぶ。シャンパーニュで作る発泡酒だけをシャンパンと呼ぶのと同じ。作り方はもち米を水に浸し、蒸して麦麹を加え、甕に入れて発酵させる。それを絞って甕に入れ、口を石膏で固める。これで3年以上寝かせると紹興酒の名前がつく。

花彫とあるのは年数の経った老酒は甕の外側に花を飾りで彫ったからで、時間が経っているという意味。正式には土中で甕を保存し、じっくり発酵させる。

紹興酒は甕に入れて時間が経てば経つほど澄んだ味になる。紹興みやげに二十年ものをもらったことがあるが、飲むと普段の紹興酒とまるで違う、透明な味は高貴な雰囲気。甘みは抑えられているのに、香りだけがずっと甘い。三十年物もあるそうだが、お値段も相当だ。

ベリベリと葉っぱを剥ぐ。とたんに甘く香ばしい、中国の匂いが部屋いっぱいに広がった。
甕の蓋を開ける