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文豪の愛した食事

作家は何を食べている?

 日本には数多くの名作がある。そしてもちろん、それを生み出す偉大な作家の面々がいる。執筆の合間に、打ち合わせに、プライベートで、彼らが味わった様々な料理。それは文豪の糧となり、作品に反映されたことも数え切れないほどあるのだ。

 日本を代表する作家はどのようなものを食べ、歴史に残る文章を生み出したのだろうか?現存する、文豪を魅了した食の数々をご紹介しよう。

 最初にご紹介するのは、銀座の維新號。山口瞳が最後に外食した場所として知られている。元々この店を贔屓にしていて、叉焼麺と肉まんを注文することが多かったという。吉川英治や谷崎潤一郎、留学中の魯迅も訪れた店だ。肉まんは池袋東武などでテイクアウトすることができ、手軽に文豪の気分を味わえる、かもしれない。フワフワの皮のなかにはジューシーな餡がたっぷり入り、今も尚多くの人に愛されている。
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神楽坂 たつみや

著名人御用達?
神楽坂 たつみや

 井伏鱒二や常盤新平が直木賞の知らせをここで聞いたというのが、神楽坂の鰻屋、たつみや。アラーキーや岡本太郎、ジョンレノン&オノヨーコ夫妻も贔屓にしていたという、著名人御用達の店だ。

 メニューには載っていないのだが、こちらではまず、肝焼きを注文して欲しい。数に限りがあり、食べられないことも多いのだが、もし残っていれば幸運。肝の臭みがまったく感じられない、鰻を食べ歩いている人でも感動の味に出会えるだろう。柳川や白焼きを頼み、日本酒とともにチビチビとやってから、〆にうな重だ。値段の違いは単純に量の違いなので、お腹の具合次第で決めると良い。しばし蓋を取らず、蒸らしてから、いただこう。備長炭で焼かれフックラとした身、継ぎ足され続けたタレが合わされば思わずかっこみたくなる美味さだ。

 場所は、毘沙門天斜め前、肉まんで有名な「五十番」の角を曲がってすぐ。お腹に余裕があれば合わせて楽しんでもいいかも。
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永井荷風が毎日通った
浅草 尾張屋

 あめりか物語、濹東綺譚などの作者として知られる永井荷風。離婚後は生涯一人身だったが、市川の自宅から毎日浅草に通い、ストリップ劇場に入り浸っていたという。その際、雨の日も風の日も毎日通い続けていたというのが、尾張屋だ。荷風の来店時から店に出ていた女将は語る。

 「毎日決まった時間、決まった席で、かしわ南蛮を召し上がっていました。必ず筋を残されるので、途中からは筋のない部分を選んでお出ししてたんですよ。うちの看板メニューは天ぷらそばなんですけど、見向きもしませんでしたねぇ。必ず同じ席にお座りになるんで、一度意地悪してその席に前もって他の客を座らせてしまったことがあるんです(笑)でも、その日の先生は不機嫌で不機嫌で。以来、その席は時間になると空けておくようにしました。元旦のお休み以外、本当に毎日召し上がってましたね。最後にいらっしゃった日にトイレで倒れられて。タクシーを呼んで店の者が乗せたんですが……数日後、新聞で亡くなったことを知りました。」

 荷風の愛したかしわ南蛮だが、女将によれば「天ぷらそばの方が何倍もお勧めなんです。この値段でこれだけのものを出せるのは、海老屋と直接取引きしているから。先生にも一度くらいは食べてもらいたかったですねぇ」だそうだ。 
浅草 尾張屋