日刊 勝ち組スポーツ・勝ちスポ!
上野を散歩するならさんぽす

宇宙に値段をつける宇宙ビジネス

大胆な転職! 
バイヤーから宇宙ビジネス最前線へ

 宇宙旅行がしたい。したいんだから、自分たちで宇宙へ行ってしまおう。大筋ではそういうことである。

?アストラックス は、宇宙に行きたい人たちが作った会社だ。アメリカのロケットプレーン・キスラー社が就航を予定している宇宙飛行機をチャーター、販売する宇宙旅行代理店である。代表取締役社長の星野誠氏は若干28歳。NASAとかJAXAとかそういった関係の人かと思っていたが、前職は
「実はブランド品のバイヤーをしていたんです」
宇宙旅行会社の社長なのに、宇宙とも旅行とも関係ない。
「旅行が好きで、宇宙旅行も死ぬまでにはできるだろうと思っていたんですが」とのこと。

 世の中の動きは早い。05年10月、JTBがアメリカの宇宙旅行会社スペースアドベンチャーズ社の代理店となり、シートの予約販売を開始した。価格は約1200万円(10万2千ドル)。サブオービタルと呼ばれる、最大高度約100km、宇宙滞在時間数分〜十数分のミニ宇宙旅行だ。

 星野氏はこのシートに申し込み、そのことが人生を変えた。本物の宇宙飛行士たちと会い、日米の宇宙に対する温度差を痛感したという。

 多くの日本人にとって、宇宙は非現実的なおとぎ話の世界だが、アメリカ人は違う。名だたる富豪たちが財を投げ打ち、私費で民間宇宙ビジネスを起業している。世界初の宇宙ホテル「ジェネシス2」の打ち上げを予定しているビゲロウ社は、ロバート・ビゲロウ氏が個人出資で作った会社だ。ネットの書籍販売で急成長したアマゾンの創立者ジェフ・ベロス氏は、ブルーオリジン社で垂直上昇ロケットの研究開発を行っている。
星野氏
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ロケットプレーン・キスラー社

飛ばぬなら飛ばしてしまえ
民間有人宇宙飛行へのチャレンジ

 日本に技術がないわけではない。たとえば夏に打ち上げが予定されている月探査衛星「セレーネ」は純国産衛星だし、国際宇宙ステーションの日本モジュール「きぼう」も日本で建造している。H-?Aロケットを筆頭に、大推進力の国産ロケットも所有している。にもかかわらず、日本にはアメリカのような熱気はない。有人飛行への機運はない。

 アメリカのように、これからは日本にも民間宇宙旅行会社が必要なのではないか? 星野氏はそう思った。実は日本でもすでに宇宙旅行会社スペーストピアが立ち上がっていた。スペーストピアに紹介され、星野氏は大手航空会社の社長やロケットエンジニアなど錚々たるメンバーが集まり、民間での有人宇宙飛行を研究している団体があることを知った。時まさにメンバーの高齢化が進み、解散か? という時である。星野氏は研究会を引き継ぐ形で、有人ロケット研究会を設立したのだ。思いついたら即行動。若いって素敵だ。

 有人ロケット研究会に関係している数社はロケットプレーン・キスラー社と提携、別個に機体をチャーターしていた。また、ロケットプレーン・キスラー社はサブオービタル宇宙旅行を計画していた。

 しかし、バラバラに3便は効率が悪い。そこで日本でのロケットプレーン・キスラー社の統一窓口として別会社を興すことになり、アストラックスが設立されたのだそうだ。

 役員にはNASAの元管制官や建設会社の宇宙開発事業の研究者、他の宇宙旅行団体代表などが名を連ねている。いわば素人は星野氏だけ。その素人が情熱を買われて社長に選ばれたのだから、何がどう転がるかわからない。
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激烈過酷な宇宙空間
それでも人は空を目指す

 地球の周回軌道を目指す本格的な宇宙旅行の場合、打ち上げ時の加速も強いし宇宙や無重力に対する一定の知識が必要になる。相当の訓練がなければ行く事はできない。世界初の民間宇宙旅行者として国際宇宙ステーションに約1週間滞在したデニス・チトー氏の場合、訓練は8カ月にも及んだ。

 宇宙はけして安全な場所ではないからだ。先日、JAXAの運営する筑波宇宙センターで、アメリカに運ばれる前の日本のモジュール「きぼう」を見ることができた。年末にはスペースシャトルに積まれ、国際宇宙ステーションにドッキングする予定である。

 国際宇宙ステーションは地上約400kmの軌道上を回っている。400kmというと東京−大阪間ぐらいだから相当な高さだが、地球の直径12000kmに比べれば、ほとんど表面すれすれ。それでもそこは地上とはまったく違う世界なのだ。

 担当の方の話では、太陽の当たる面の温度はおよそプラス150度、反対の影の部分はマイナス150度なのだそうだ。大気がないから、そういう極端な温度差が生じる。モジュール内はエアロバイクを漕ぐだけで数字が動くほどの微小重力、そのため、見学の際にはクリーンルームを通った。無重力下では何もかもが浮き上がる。モジュール内に持ち込んだほこり1つが、飛び回り人を傷つける。

 軌道上にはスペースデブリ(=宇宙ゴミ)が衛星と同等の速度、つまり秒速数kmの超高速で飛び回っているわけだ。数グラムのスペースデブリは10センチのアルミ塊をえぐり取るほどの破壊力を持つ。これは弾丸、むしろ砲弾が飛んでいるに等しい。一方、アルミ合金からなるモジュールの最薄部分はたった5mmだという。ぶつかれば国際衛星ステーションなど豆腐のようなものだ。
JAXA