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大学発ブランド「近大マグロ」探訪

迫り来る魚影 串本の海に黒いダイヤを見た!

迫り来る魚影
串本の海に黒いダイヤを見た!

 直径30m、深さ10mの円筒形の生け簀を覗き込むとすぐに、悠々と泳ぐマグロの魚影が見えた。間近で見ると、「黒いダイヤ」と呼ばれる意味がよく分る。しかも、かなりデカイ。
「あれはまだ70kgくらいですね。大きいものだと300kgを越えますよ」と、さらりと言ってのける大久保氏。

 すでに釣り上げ作業は始まっており、4人の職員さんが生け簀を囲んでマグロを狙っていた。
「もっと沢山市場に出して欲しいとの要請もありますけど、完全養殖のマグロの出荷は月に一本。次世代に繋げるために、そう決めて守っているんです」
 2002年に完全養殖に成功し、2004年に初出荷を達成してから、わずか3年。まだまだ完全養殖のマグロの頭数も少ない。今後、事業を拡大する為にも仕方のないことだろうと思ったが、実はそういう意図ではないらしい。
「これ以上の拡大は考えていません。大学が母体ですから経営より研究第一。それに、もっと別の展開を考えているんです」

 大久保氏が語るそれは、世界の食糧事情をも左右する壮大な計画でもあった。
「近大が培ってきた完全養殖のノウハウを世界に売るんです」
 なるほど。天然資源に頼らない自給自足の完全養殖が普及すれば、乱獲問題や燃料問題もクリアされる上に、食糧不足で悩む国の救済にもなりえる。宗教上の食事制約も、魚なら広い範囲で受け入れられるに違いない。
 近大マグロは、マグロの魚体以上に壮大な夢を孕んでいるのだ。
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安心で安全な近大マグロ
勝ち組に許された至福のひととき

電気を通した竿で生け簀から釣り上げるとはいえ、間近で見るマグロの一本釣りはド迫力だ。この日は蓄養マグロの出荷もあり、100kg近い魚体が次々に釣り上げられ、すぐに臓物を処理されて、巨大なトロ箱に収められていく。
しかし、それを見ていて微かな疑問が沸いた。マグロは大海を旅する回遊魚。生け簀でストレスは溜まらないのだろうか?
「マグロの生け簀は、通常の養殖の5分の1程度の密度で、出来るだけストレスがかからないように育てています」
 大久保氏はさらに、完全養殖の利点が安全性にあることを言及する。海洋食物連鎖の頂点に存在するマグロは、世界各地を回遊する間に水銀などの有害物質を蓄積しやすい。しかも地中海産のマグロにいたっては、わずか12gで許容摂取量を超過するダイオキシンが検出されているという。その点、完全養殖の近大マグロは出処も明確で、安全で安心というわけだ。

 近大マグロは現在、近鉄百貨店(和歌山・奈良・阿倍野)、阪急オアシス(桃山台・北花田)などの店舗で、週末に店頭に並ぶ。関東でも三越日本橋店で第一金曜日に売りに出されているが、即完売するほどの人気ぶりだとか。

 完全養殖が世界的に普及すると、もっと安価で大量にマグロが食べられるのでは? そんな質問に氏は苦笑いでこう答えた。
「マグロ一匹を成魚まで育てる餌代が莫大ですからね。安全で安心できる魚を安定して供給は出来ても、金額的にはそう簡単にはいきませんねえ」
 まだしばらくの間は、大トロは勝ち組の食卓にのみ並ぶ状況が続きそうだ。


取材協力:
株式会社アーマリン近大
安心で安全な近大マグロ 勝ち組に許された至福のひととき