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神仏に出会う霊場巡礼

さまざまな霊場巡り

「やっとお遍路の旅から帰って来た」

 しばらく見ないうちに、すっかり日焼けした友人の開口一番がこれでした。恋人にふられ、仕事に行き詰った彼は、思い切って仕事を辞め、お遍路の旅に出たのだそうです。

 お遍路の旅とは、四国にある八十八ヶ所の札所を順番に参拝し、弘法大師の功徳を得るというもの。読経や経をし、納経帳にご朱印をいただきます。

 弘法大師は今もこの札所を巡拝し続けていると信じられ、札所を逆から回ると、弘法大師と出会う可能性が高いとも言われます。また、巡礼者の頭にかぶられている傘に書かれている「同行二人」という文字には、「弘法大師と二人の道行き」という意味が込められているのです。

 しかし、この道中は決して楽なものではなく、徒歩で周るとすべての行程に一ヶ月以上かかり、登山で脚を鍛えた友人でさえ膝を痛めたほどだとか。しかし、途中でうどんのふるまいを受けたりするうちに、人の心の温かさを思い出し、ショックを受けた心が癒されたのだそうです。

 四国は少し遠いという人もおられるでしょう。霊場の巡礼は、なにも、西国八十八ヶ所めぐりだけではありません。

 徳道上人により始められた、西国三十三ヶ所巡りや、役行者が般若経納めたと伝えられる二十八の塚を巡る葛城二十八宿巡りなど。
 関東では、鎌倉三十三観音霊場や、有名な浅草寺を含む、江戸三十三観音霊場巡りなど、さまざまな霊場巡りが存在し、そのご朱印を集めることにより、功徳を授けられると信じられています。
霊場巡り
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観音菩薩

日本人に人気の高い観音様

 関西では、西国三十三ヶ所巡りが盛んに行われています。かく言う私の母や祖母も、ご朱印帳に三十三ヶ所のご朱印を集めていますが、熱心な巡礼者でないかぎり、三十三ヶ所すべてを集めるのは、なかなか難しいようで、すべてのページが埋まるまでには、まだ少し時間がかかりそうです。

 ちなみに、この三十三ヶ所の寺、すべてのご本尊は観音様です。
 また、坂東三十三ヶ所と、秩父三十四ヶ所とあわせて、日本百観音めぐりと称する場合もあるとか。つまり、「霊場巡り」と銘打たれているものの多くが、観音様巡りであるということがわかりますよね。

 なぜ、ここまで観音様の人気が高いのでしょうか。一つには、女人に対する功徳があげられるでしょう。
 現代でも、「女人禁制」を謳う霊場がなくならないように、その昔、女性には生まれ持っての罪過があるとされ、浄土にはいけないと考えられていた時代がありました。

 現代の女性の目から見ると、少し考えられない理不尽な話しですが、それが当たり前のことと信じられていたんですね。その時代にあって、女性を救うとされたのが観音様だったのです。

 観音様は、手に蓮の花を持った優しいお姿をなさっています。
 如意輪観音をご本尊とする観心寺の住職さんは、蓮の花は、観音様がそもそも女性であったことを暗示していると説明されました。
 また、蓮の花には、「泥中不泥」「花果同時」「不老長寿」つまり、泥の中に咲いて泥に染まらないこと、花と実を同時に結ぶこと、そして不老長寿の功徳があるとされています。観音様は、その蓮のように力のある仏様なのでしょう。
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葛城二十八宿・経塚めぐり

 修験者(山伏)にとって、必須の修業とも言われるのが、葛城二十八宿巡りでしょう。二十八宿とは、役行者が般若経を納めた二十八の塚それぞれを指すもので、修験者の行場ですから、当然、難所が多くなります。

 中でも友ヶ島虎島の経塚は、ロープを使わずには登ることができないほどの急傾斜の上にあります。葛城二十八宿巡りの、他の霊場巡りと違うところは、「功徳をいただくため」という以上に、修業の意味が籠められているところにあるといえます。

 では、ここで、役行者という人物について少し見ていきましょう。
 彼の業績について説明しているのは、続日本紀や、日本霊異記など。七世紀から八世紀にかけて実在したとされる人物で、修験道の開祖。無実の罪により伊豆に流罪になりましたが、夜は富士山まで飛んで、修業をしたとされるスーパーマンです。

 また鬼神を使役し、不思議な力を使ったとされてもいます。ただ、なにしろ昔の人物ですから、さまざまな伝説や推測が入り混じっていて、実際のところはよくわかりません。しかし、彼の存在が時の朝廷にとっては大いなる脅威であったということは事実のようです。

 また「修験道」の開祖なわけですから当然ではありますが、修験者にとって、役行者は非常に重要な存在です。また、大峰山や金剛山など、修業の山全体においても、彼は神とされています。

 それら修験の山でひげを蓄えた細身の老人の銅像を見かけたら、その前後に何かいないか確かめてみてください。もし、小さい子鬼が二匹いたら、それは前鬼と後鬼。老人は役行者に間違いありません。
役行者