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日本人の線香花火

毎日新聞の朝刊 「8月4日刊」

個性のある国産
基本は抑えてあるが今一つの中国産

 どの程度違うものなのか。まず先に中国産に火をつけてみた。牡丹、松葉、柳、散り桜、問題なく順番に変じていく。
 玉の持ちも良く、特に問題はないように思えた。中国産を基準に国産の違いを見ていこう。

 ではまず巧から。なるほど火花の散り方が大きい。
 爆発力でいえば中国産の方が上だと思うが、遠くまで全方向に火花が散る。玉ができ、それが落ちてから散り桜。これが長い。
 明らかに中国産よりも長くチリチリと燃えている。散り桜の火花が宙に消えていく様子が美しい。魅入られてしまう。来し方行く末をしばし考えてしまった。

 牡丹桜は何かしら華やかだ。松葉の火花の散り方が、上に行ったり下に行ったり、すべての方角へ万遍なく飛んでいく。
 できた玉が大きく、じっくり燃えた後にポロリと落ちる。柳の火が収束する様もバランスよく感じた。巧よりも長くいつまでも燃えている感がある。

 不知火牡丹は明らかに他と違った。派手なのだ。バーッと火花が散り、大きな玉ができる。
 中国産は火花は大きいが、それよりも瞬発力がある。玉がすごく大きくなってプルプルと震え、ボトンと重く落ちた。
 昔の線香花火の作り方を再現したというのがよくわかる。ブチッと途切れるように終わるのは、子どもの頃に遊んだ線香花火も同じだった気がする。呆気ないと言えば呆気ない。
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冬は火鉢で楽しんだ江戸時代
線香花火と向かい合う

 国産3種類を遊んでみて、なるほどと思ったのはメリハリというかドラマ性というか、せいぜい30秒、長くても1分間の中に人生をメタファーさせるだけの起承転結が盛り込まれていることだ。
 中国産はそのコピーという感が強い。

 個性というかシーンとシーンのつなぎというか、火花も玉も国産に負けていないし、負けないどころか一番派手だったのだが、比較すると情緒に訴える部分が小さい。持ち手の長さや質感も影響するのだろう、悪くないのだが、踏み込みが浅いのだ。

 しかしそこに価格の差が感じられるかといえば、それはまた別の話。
 ブラインドテストで、これが国産、これが中国産と区別することはできると思うが、しかしそれが価格差として理解できるかというと微妙だと思った。ただ、たとえばフカヒレはおいしいけれど、それ以上にフカヒレの味で感じる感動はフカヒレでしか味わうことができない。

 安い方でいえば、カップヌードルもそうだ。カップヌードルはカップヌードルの味で他のインスタントラーメンでは代わりにならないようなもので、オンリーワンの味である。国産品にはその独自性がある。中国産にはそういう製品に込められた哲学はない気がする。

 江戸時代、線香花火は冬場の室内の遊びとして、火鉢の上で楽しまれたのだそうだ。
 季節を問わずに無聊を慰める小粋な遊びだったわけである。

 そうやって大人の遊びとして考えるなら、やはり国産の、物語性の高い線香花火が正しいありようである。1本4円で埋まる退屈に埋める孤独もないものだろう。

 しばしの時間、線香花火に我が身を省みる夜というのも悪くないと思うのだ。
「ひかりなでしこ」