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オリンピック観戦ついでのイタリア

トリノ五輪、なぜか盛り上がっていない?

 トリノ五輪まであとわずか。日本人はオリンピックが近づくと、自分の国のことでもないのになんだかウキウキしてしまうものだが、イタリア人、とても冷めている。テレビでオリンピック関係のコマーシャルが始まったのも1月中旬に入ってからだし、「もうすぐオリンピックですなあ」「そうですねえ」なんていう会話すらない。地元トリノの街を歩いてみると、駅前の公園に申し訳程度にオリンピックシンボルのオブジェが設置されている。でも、周りでは工事のおじさん達の作業は続く…。王宮広場でもオリンピック施設は建設中。オリンピックにあわせて開通予定の地下鉄もまだ走っていない。本当にオリンピックがやってくるのだろうか?


 さて、この「盛り下がり」ぶり、実はトリノという街のせいでは、とも思われる。トリノは1861年にイタリアが統一された際は首都だったが、それはたったの5年間。その後はイタリア自動車産業の雄、フィアット社(Fabbirica italiana automobili torino「トリノのイタリア自動車工場」と言った意味)の興隆によって経済の中心地となるが、社の経営不振によって現在は何となく「斜陽の街」。オリンピック景気もそれほど沸いていない。


 それにフランスとの国境に近いトリノは、一般イタリア人にとっては地理的に「イタリアの果て」。きちんと都市計画されたフランス風の街並みも、フランス語に似た方言も「イタリアじゃない」と言われる始末だ。そんなわけか、イタリア人にとって今回のオリンピックはなんとなく「どーでもいいこと」なのだ。



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文化都市トリノをめぐる

 さて、「斜陽」とは言え、かつては首都だったトリノ。実は見所が数多くある。まずは、モーレ・アントネッリアーナ。建築家アントネッリによって1862年に建設された高さ167mの塔だ。かつてはイタリア一の高さを誇った。エレベーターで頂上に昇り、トリノの街と美しいアルプスを一望してみるのもいいだろう。この塔の中には国立映画博物館もある。ここでは映画機材などの展示のほか、モニターで様々な映画作品を断片的に鑑賞することもできる。一階のカフェスペースはハイテクなインテリアがおしゃれ。テーブルにはめ込まれたテレビ画面に有名な映画のワンシーンと一緒にメニューが映し出されるので、「これはフェリーニの映画だねえ」なんて彼女にウンチクをたれるのもいいだろう。


 あまり知られてはいないが、トリノにはカイロの博物館に次ぐ規模のエジプト博物館もある。ナポレオンのエジプト遠征に従軍したトリノの軍人が「おお、えーもんがある。地元でみせびらかそうではないか」と持ち帰ったというコレクション。こんなにたくさんと持ってきてしまって「おいおい」という気がしないでもないが、館内にはトトメス3世の神殿や大富豪の墓の内部を再現した部屋などがあり、見ごたえ十分。オリンピック観戦の後、この博物館で静かに古代の歴史に触れるのもオツなものだ。


 長年フランス領だったトリノにはフランス風のカフェ文化が息づいている。歩き疲れたあとはお洒落なカフェでゆっくりとお茶をするのもいいだろう。お茶うけやお土産にはトリノ名物、へーゼルナッツ味のチョコレート「ジャンドュヨッティ」をお忘れなく。


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工業都市トリノの歴史を刻むハイテクホテル

 せっかく工業都市トリノに行くのだったら、フィアットの元工場を改装したホテル、ル・メリディアン・リンゴットに宿泊してみては?


 フィアット社最大の工場であったリンゴット工場は1923年に操業開始。当時の最先端の建築技術を駆使したこの工場、1階から製品の生産ラインがスタートし、階が上がるごとに組み立てが進んで行って5階に到達した時に完成、という複層式の珍しい工場だった。屋上にはなんと自動車のテスト走行用のコースもあった。フランスの建築家ル・コルビジェが「『世界で最も美しい工場』と評価した」というが、妙に近未来的なデザインはサンダーバードとか円谷プロの特撮シリーズのセットみたいで懐かしさがこみ上げてしまう。1982年に工場が閉鎖された後は、建築と産業の歴史を保存する目的で、ショッピングセンター、映画館、見本市会場など市民のための施設に改装された。これを指揮したのは関西空港のデザインでも有名な建築家、レンツォ・ピアノ。このホテルもレンツォ・ピアノによる再開発プロジェクトの一部だけあってガラスやメタリックな素材を多用したシンプルかつハイテクなデザインだ。吹き抜けを利用したレストランスペースも美しい。屋上には工場時代の自動車走行コースも残っている。建築ファン、美術ファンには一見の価値あり。昨年は隣に姉妹ホテル、ホテル・リンゴットART + TECHもオープンした。

ル・メリディアン・リンゴット フィアット リンゴット工場