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キミは、ふんどしを締められるか!

ジローラモが褌(ふんどし)姿
今年の夏は褌なのだ

どうなっているのだ。ちょいワルなパンツェッタ・ジローラモが褌(ふんどし)姿だ。今夏、角川書店の読者プレゼントはふんどしなのだそうだ。もらってうれしいのか? キャッチコピーは「ちょいオタ」。オタクをちょいワルに引っ掛けたことぐらい、お父さんにだってわかる。しかし、ふんどしだ。オタクとふんどしの間には、何か親密なものがあるのか。

プレゼントされるのは越中ふんどしである。T字型になっていて、腰でひもを結んで、そこへ股間から回した布を通すヤツ。もらってどうするんだろう。やっぱり締めるのか。

ふんどしにはいくつものバリエーションがある。『ふんどしと和物の雑学大全』によれば、本来のふんどしは六尺ふんどしなのだそうだ。長さ6尺、約2mの布を締める。越中ふんどしは江戸時代に入って登場したのだそうだ。越中というからには富山が発祥の地かと思ったが、まったく関係ないらしい。遊女「越中」あるいは上州越中の守に由来するという。歌麿の絵にも越中ふんどしが描かれているという。他に六越ふんどしやもっこふんどし、漁師の締めていた九尺ふんどしや戦前の子供が海水パンツ代わりに履いた黒猫ふんどしなどがあるのだそうだ。

ところで、世の男性でふんどしをキチンと締められる人はどのくらいいるだろうか。かなり少ないのではないか。ふんどしを締めるには着物を着る前提が必要だが、着物を着る機会自体がほとんどない。自分は今40歳だが、そもそも着物を着たことがない。せいぜい旅館の浴衣止まりだ。間違った大人だと思う。
角川書店の読者プレゼント
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越中ふんどし=クラシックパンツ
百貨店でお買い求めください

そういうわけでふんどしを締めてみることにした。まずはふんどしから、だ。越中ふんどしと六尺ふんどしを買おうと思うのだ。

ふんどしは和装の下着である。そう考えてまずは呉服屋を数件回った。

「ふんどし? うちではそういうものは扱ってないねえ」

メガネをかけた老亭主に鼻で笑われた。そういういものとは何だ。失敬な。

結局、どこも扱っていなかった。意外である。今どきは和服の時も下着はパンツらしい。仕方ないのでデパートを覗いてみた。

さすが百貨店。取り扱い商品にはふんどしも入っていた。紳士下着の売り場である。越中ふんどし、商品名クラシックパンツ。三越銀座店では全13色のカラフルなシリーズを三越ブランドで発売中なのだった。白が500円、色つきが600円だ。しかし六尺ふんどしはなかった。

デパートを出た後、買いたてのふんどしをどうしても締めたくなった。かつて飛脚はふんどし一丁で町を行き来していた。今でも祭りの時は男たちはふんどし一丁だ。トランクスにはない、自由闊達な文化がふんどしにはある。その真髄を試してみたい。ふんどしを締める、その場所が室内であろうはずがないではないか。
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グリップ力が弱い越中ふんどし
本当のふんどしは六尺にあり

そうした事情で、雑居ビルの屋上に上がったのだ。誰もいないビルの屋上に上り、越中ふんどしを締める。太陽のもとにふんどしをさらす。それでこそ本来のふんどしである。

胸を張ったが、行動は卑屈だ。給水タンクの陰でこそこそとパンツを脱ぎ、同封の説明書を読みながら越中ふんどしを締めた。恐る恐る日の当たる場所に出た。風が吹いた。

(ああ、自由だ)

ふんどし、それは自由の象徴。そして私はフリーダム、なはずだったのだが、これが落ち着かない。越中ふんどしはグリップがないのだ。T字の長い部分を後ろから前に股座を潜らせ、腰紐に通すとすぐにゆるゆるとゆるむ。締め方が間違ったか? と同説明書を読み直したが、正しいようだ。これでは「ふんどしを締め直す」という言い回しとはほど遠い。六尺ふんどしでなければ、締めた、感じにはならないらしい。

越中ふんどしは百貨店にあった。六尺ふんどしはどこにあるのか?

ビルの屋上で白いふんどしをたなびかせ、遠くに見える佃島のツインタワーを眺め、気がついた。ふんどしといえば祭り、祭りといえば東京なら浅草ではないか。
越中ふんどし