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日本の旨い物〜高級珍味

珍味いろいろ 
その壱「長崎のからすみ

 夜の空気が肌寒くなってきた。冬は日本酒の旨い季節。仕事が終わった後に美味なる日本酒をきゅっと…そう想像すると家路に向かう足がほころぶ。日本の風土が産み出した偉大なる美酒・日本酒。この酒の味を引き立ててくれる肴が「珍味」だ。 

 日本三大珍味といえば江戸時代から「からすみ・このわた・うに」とされる。からすみはボラの卵、このわたはなまこの卵、ふぐは毒を持つ食べ物。こんな食べ物を高級珍味にしてしまうのだから、日本人はよほど食に貪欲なのだろう。また四季のある風土が産み出した生活の知恵でもあるのだろう。
 
 高級珍味といえばまず思い浮かべるのが「からすみ」。ボラの卵巣を塩漬けにし、圧搾・乾燥させたもの。サワラやタラ等の卵巣で代用品が作られるため、ボラの卵巣を使用したもののみが「本からすみ」と呼ばれる。形が中国から渡来した墨「唐墨(からすみ)」に似ていたことからこう呼ばれる。
大きなものでは20センチ大にもなるからすみをうすくスライスして食べる。塩味の中にふくよかなうま味があり、日本酒によく合う。からすみの老舗といえば、長崎の小野原本店。安政6年創業時より現在まで手づくりのみで作られるこだわりの逸品で、皇室御成婚や即位式にも献上される一級品だ。一腹数万もする高価な珍味だけに、贈り物としても喜ばれる。
小野原本店・からすみ
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幸寿司・このわた

その弐 「能登のこのわた」

 同じく三大珍味に数えられるのが「このわた」。漢字で書くと「海鼠腸」で、文字通りナマコの腸を塩辛にしたもので、見た目には濃淡のオレンジ色。口に入れるとしょっぱくてこくがあるくせになる味だ。 

 このわたは石川県能登、とりわけ穴水産のものが美味。能登でのナマコ漁は11月中旬から2月下旬のみ行われ、それ以外の時期は禁漁となる。ナマコ自体が貴重な海産物なのだから、ナマコの腸のみで作られる「このわた」が貴重でないはずがない。しかも冬限定の珍味だ。
 
 穴水産のこのわたが買えるお店が幸寿司。穴水駅にほど近い寿司屋の大将が、能登の旨い物を全国へネット通販するサイトも好評だ。このわたを作るのには大変な手間がかかる。幸寿しが扱うのはこのわた作り一筋の遠藤さんご夫婦が作るものだけ。ナマコの腸をとりだし、砂を吐かせ、箸でしごいて身を集めたものを塩辛にする。酒の肴には最高の珍味だが、あつあつのごはんの上に乗せても美味しい。
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その参 「生くちこ」

 このわたと対をなし、珍味として重宝されるのがくちこ。ナマコの卵巣を三角形にして干したものが「くちこ(干口子)」だ。ナマコは口から産卵するので「くちこ」と呼ばれる。またナマコの子であるので「このこ」とも、三味線のバチのように三角形に干すことから「ばちこ」とも呼ばれる。 「くちこ」は藻のように細い糸状の卵巣を紐にひっかけて、天日で10日間干し固めて作る。 

 「くちこ」は軽く火で炙って頂く。ほんのりとよい香りが口の中に広がる。そのまま熱燗に入れて飲むのも通な愉しみ方。お吸い物や雑炊にいれるのもよい。地元の方に聞くとお茶漬けにして食べるのが美味しいと言うが、なんと贅沢な食べ方だろう。 
 
 「くちこ」を乾燥させず生で食べるのが「生くちこ」。生くちこはかの食通・北大路魯山人も絶賛したと言う珍味中の珍味。本来は生で食すもので日持ちがしないので、貴重な珍味だ。 

 穴水産の「くちこ」や「生くちこ」を食べるなら、やはり能登の酒を飲もう。やはりその土地が産んだ食べ物にはその土地の酒が一番あうものだ。 おすすめは松波酒造の「大江山」。きりっとした純米で能登を味わいたい。
幸寿司・生くちこ